「ひとくちちょうだい」
私はこの言葉をかけられることが大っ嫌いだ。
大嫌いではなく、「大っ嫌い」だ。
この言葉をかけられると、
波がスーッと引くように、相手のことが嫌いになる。
「ひとくちちょうだい」
この言葉をかけられて、断れる人がいるだろうか?
この言葉をかける人間は、断られると一切思っていない。
「ひとくちちょうだい」とお願いしながら、
フォークを出して、もう食べる準備をしている。
これは立派な犯罪である。
例えば、コンビニで買ったチョコレートアイスの「ピノ」。
6個入りだ。
「1個ちょうだい。私のアイスひとくちあげるから。」
・・・
私は、ピノ6個ぜんぶ食べたいのです。
6個ぜんぶ食べるイメージでこれを買いました。
どのピノから食べるか順番も考えていました。
6個食べた後の満腹感がほしいのです。
あなたのアイスはいらないのです。
あなたのピノを買ってあげるから、それ食べてください。
例えば、レストランで頼んだ「カルボナーラスパゲッティ」。
1人前だ。
「ひとくちちょうだい。私のパスタも食べてみて?」
・・・
私は、カルボナーラスパゲッティをこの量ぜんぶ食べたいのです。
あなたのパスタは味見したくありません。
カルボナーラスパゲッティをあと一皿頼んであげるから、それ食べてください。
この話になると、
頭にかーっと血が上る。
最近流行っている犯罪傾向としては、
「ひとくちちょうだい」の前に
「ひとくち食べる?」と先に声をかけることで、
「じゃあこっちもひとくち食べて~♪」という言葉を引き出し、
「ひとくちもらうこと」を絶対的に成功させようとするヤツがいる。
そんなときは、
頭で考えるより先に「いらない」と口が勝手に答えている。
断れることが初めてのようで、
「え・・?」という表情だ。
誰かがNO!と言わない限り、
この犯罪はつづく。
「ひとくち食べる?ひとくちちょうだい♪」
を世界で初めて断った性格の悪い人間として
これからも生きていく。